外壁塗装や屋根の工事を検討していると、「今ご契約いただければ、足場代を無料にします!」という、非常に魅力的な言葉を耳にすることがあるかもしれません。工事費用の中でも大きな割合を占める足場代が無料になるなら、これほどお得な話はないように思えます。
しかし、一度立ち止まって考えてみてください。専門の職人が一日がかりで組み立て、安全を確保し、工事が終われば解体する。そのための部材費や人件費が、本当に「無料」になることなどあり得るのでしょうか?
結論から申し上げます。私たち住宅監査のプロは断言します。その「無料」という言葉の裏には、巧妙なカラクリと、将来、あなたが後悔しかねない大きなリスクが隠されています。
この記事では、私たち一般社団法人 日本住宅監査機構が、なぜ「足場代無料」があり得ないのか、その費用の内訳から、業者が使う手口、そしてそうした業者を避けるべき本当の理由まで、専門家の視点で徹底的に解剖していきます。大切な住まいと財産を守るため、ぜひ最後までお読みください。
外壁塗装で「足場代が無料」は絶対にあり得ない
まず最も重要なこととして、健全な経営を行っているリフォーム会社や塗装業者において、足場代が本当の意味で無料になることは絶対にありません。
足場は、工事の品質と職人の安全を守るために不可欠な設備です。その設置と解体には、専門の職人の技術、数多くの部材、そしてそれらを運ぶための費用など、明確なコストが発生しています。もし、見積書の上で足場代が「0円」になっていたとしたら、それは「無料になった」のではなく「他のどこかに費用が隠されている」と考えるのが正しい認識です。
なぜ足場は無料にできないのか?費用の内訳と重要性
足場代が有料である理由をご理解いただくため、まずはその「重要性」と「費用の内訳」を詳しく見ていきましょう。
足場の重要性
足場は単なる作業台ではありません。
安全の確保 | 高所作業を行う職人の命を守る、最も重要な設備です。安全な足場がなければ、丁寧で確実な仕事はできません。 |
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品質の向上 | 安定した足場があることで、職人は両手を自由に使うことができ、塗装のムラを防ぎ、細部まで質の高い作業を行うことができます。 |
近隣への配慮 | 足場に取り付ける飛散防止ネットは、高圧洗浄時の水しぶきや塗料が近隣の住宅へ飛散するのを防ぐために必須です。 |
足場費用の内訳
一般的に、足場代は工事総額の約15%~20%を占めると言われ、その費用は主に以下の要素で構成されています。
部材レンタル・運搬費 | 大量の金属製のパイプや板といった部材を、現場までトラックで運び、工事後に回収するための費用です。 |
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人件費(組立・解体) | 専門の資格を持つ足場職人(とび職)が、安全基準に則って足場を組み立て、解体するための人件費です。塗装職人とは別の専門職人が担当します。 |
飛散防止ネット代 | 近隣への配慮として必須のメッシュシートの費用です。 |
これだけの明確なコストが発生する足場が、「無料」になることはあり得ない、ということがお分かりいただけるかと思います。
要注意!「足場代無料」の巧妙なカラクリ3つのパターン
では、「無料」と謳う業者は、どのようにして足場代分のコストを回収しているのでしょうか。その手口は、主に3つのパターンに分類できます。
パターン|01 | 他の工事項目への上乗せ |
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最も一般的な手口です。「塗料代」や「施工費」といった、一般の方には相場が分かりにくい項目に、足場代分の費用が少しずつ上乗せされています。例えば、本来80万円の工事費に20万円の足場代がかかる合計100万円の見積もりを、「塗料・施工費100万円、足場代0円」と見せかけているのです。結果的に支払う総額は同じか、むしろ割高になっていることさえあります。
パターン|02 | 必要な工程や材料費の削減(手抜き工事) |
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これが最も悪質なケースです。総額を安く見せるために、本来は絶対に省略できない工程を省いたり、材料の質を落としたりして、無理やり足場代分のコストを捻出します。
- 高圧洗浄の時間を短くする
- 塗料を規定以上に薄めて使う
- 基本の3回塗りを2回で済ませる
これらはすべて、数年後に塗膜が剥がれたり、外壁が早期に劣化したりする原因に直結します。目先の安さと引き換えに、建物の寿命を縮める行為に他なりません。
パターン|03 | 大幅な値引きを演出するための道具 |
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訪問販売などでよく使われる心理的なテクニックです。最初から足場代を上乗せした非常に高額な見積もりを見せておき、「本日中に契約してくれるなら、特別にこの足場代25万円を無料にします!」と、その場で契約を迫ります。これは、顧客に冷静な判断をさせないための常套手段であり、全くお得ではありません。
なぜ「足場代無料」を謳う業者を避けるべきなのか?
「総額が変わらないなら別にいいのでは?」と思われるかもしれませんが、問題はそれだけではありません。「足場代無料」を謳う業者には、企業体質として以下のような重大な懸念があります。
顧客に対して不誠実である
「無料」という言葉で顧客の判断を誤らせようとする姿勢は、顧客の利益よりも自社の利益を優先する不誠実な体質の表れです。そのような業者が、お客様の大切な住まいを真摯に施工してくれるでしょうか。
見積書全体の信頼性が低い
一つの項目で不透明な操作をしている業者は、他の項目でも同じことをしている可能性があります。その見積書は、もはや正しい費用計算の根拠とはならず、信頼性はゼロに等しいと言えます。
工事全体の品質に重大な懸念がある
前述の通り、「足場代無料」は手抜き工事に直結しやすい非常に危険なサインです。適正な利益を確保できない業者は、見えない部分で必ずコストを削減しようとします。
まとめ
目先の「お得感」より、見積書全体の「総額の適正性」を
今回の内容をまとめます。
- 外壁塗装において、足場代が本当に「無料」になることは絶対にない。
- 「無料」の裏には、「他項目への上乗せ」や「手抜き工事」といったカラクリがある。
- 「足場代無料」を謳う業者は、誠実さや品質に大きなリスクがある可能性が高い。
外壁塗装は、目先の「お得感」で決めるべきではありません。重要なのは、工事の工程一つひとつが適正な価格で計上された、透明性の高い見積書を見極めることです。
しかし、それを専門知識のない方が一人で見抜くのは非常に困難です。「この見積もりは本当に大丈夫だろうか?」 という不安を抱えたまま契約するのは、あまりにもリスクが高すぎます。
だからこそ、私たち一般社団法人 日本住宅監査機構が存在します。
私たちは、特定の業者に属さない、公平な第三者の立場から、お客様の見積書が適正価格であるかを厳しく診断する「価格適正診断」を行っています。「足場代が無料と言われたが、本当に大丈夫か?」「複数の見積もりがあるが、どれを信じれば良いか分からない」といったご不安があれば、契約前にぜひ一度ご相談ください。お客様の利益を確保し、安心の工事を実現することが、私たちの使命です。